No.123 | 2022年7月号
育児休業法の「改正」を生かすために〈その1〉優秀な人材の安定的な雇用めざして
日本は今、少子高齢化・人口減少が急速に進んでいます。優秀な人材の獲得や人手不足の解消は、どの企業にとっても非常に重要な課題となっています。そのなかで政府は、働き方改革やワークライフバランスが実現できる職場作りを唱道し、とりわけ「育児・介護休業法」の段階的・矢継ぎ早の改正によって、労働力の確保を促そうとしています。
遊文舎においても 2009 年 12 月に制定した「育児・介護休業規定」は、年々改定を重ね、今年2022 年もすでに 1 回改訂しています。さらに 10 月からの法施行にむけて、2 回目の改定を準備中です。必須義務とはいえ、もともと人手不足感のある中小企業において、男女ともに育休を柔軟に取得できる仕組み作りを進めるのは、もろ刃の剣でもあります。
そこで、2009 年以来の遊文舎の育休取得 12 年の状況を振り返り(右表)、同期入社・同時取得の頼もしいママさんお二人の率直な感想をお聞きしました。また今年は別の 3 人が育休・産休取得中でもあり、繁忙期に重なった業務負荷をどう解決したのか、上司による苦肉のリスクマネジメントも併せて、ご報告します(次号掲載)。お互い不安の中で乗り越えてきた私たち遊文舎の経験が、皆様の組織での今後の育休取得=人材定着の糧となれば幸いです。
出席者
石橋清香(東京支店・勤続10 年)
藤木真衣(大阪本社・勤続10 年)
聞き手:中野瞬(東京支店)

▲ 東京支社 営業推進 石橋 清香

▲ 大阪本社 営業推進 藤木 真衣
中野 お二人とも社歴も部署も同じなんですね。石橋さんが、右の一覧表の2018年・19年・20年の育休取得ですね。そして藤木さんも少し遅れてですが、2018 年からですね。
石橋 第1子は、2017年12月に出産し、産後休暇を経て育休に入り、2018年5月に復職しましたので9か月休職。それから1年半ほど勤務し、第2子を2019年11月に出産、2020年6月末復職しました。ただ、1人目のときも2人目のときも切迫早産の可能性があったので、予定していた産前休職を1か月ほど早く取ることになりました。また、2人目のときに、4月で上の子と同じ保育園が決まっていて復職予定だったのが、コロナがちょうど始まった年だったので、保育園が休園してしまって戻れなくて、結局、4月から復職ができず、11か月。なので上の子と合わせて、合計で20か月。1年8か月の休職でした。
藤木 第1子は2018年2月に出産しました。産後休暇を経て育児休暇に入り、2019年4月に復職しました。第2子の妊娠が判明したころ、ちょうど新型コロナウイルスが全国に拡がってきたときでした。1日の新規感染者数としては数百人で今から考えればすごく少ない方なんですけどとにかく怖くて。もし感染してしまったら、赤ちゃんにどう影響するのか…それで総務と上長と相談して、母性健康管理措置を適用させてもらって、産前休暇より早く2020年8月27日から休ませてもらいました。ネットでも「母体管理措置なんて適用させてもらえなかった」というコメントが多い中、快く適用してもらえたのは本当に有難たかったです。2020年11月に無事出産しまして、2022年に復職しました。第1子の時は1年4カ月、第2子が1年8カ月、両方で3年近く休職しました。
中野 今はお二人とも無事、復職なさっていますが、多少ためらいなどもあったと思うんですが、育児休暇を取るに至った流れといいますか、経緯をお伺いできたら。
石橋 結婚するにあたって、今後も遊文舎で働きたかったので、東京支店で営業として配属されていたのを営業推進に転属させて頂くことができたんです。それに、私が大阪本社にいるときに制作部で2人、育児休暇を取った上で復職している方がいたので、それに倣って自分も、という流れで。東京支店では初だったので、社員数も少なかったし、皆さんにご迷惑は掛けるんですけど、取らせて頂けるかなっていうので、退社しないっていう選択をしました。
中野 ちょうどこの「取得状況表」の2012~2013年の先輩ですね。一人は今でも外注先として協力されていますよね。懇親会にも必ず参加されるし…。藤木さんの場合はどうでしたか。
藤木 私もそうですね。以前制作の先輩方が「産休育休をとって時短勤務している」ということは知っていて、ただ営業推進で取れるのかな、という不安はありました。そしたらちょうど同時期に石橋さんも産休育休とると聞いたので、便乗した感じですね (笑)
中野 育休とったあとの自分の仕事はどうなっていくのだろうなとか、会社の対応などに不安は、ありましたか?
石橋 東京営業所は、人手が少ない中で、私が産休育休を取ると分かったときには、パートさんをまずは2人増やしてくださいました。復職したときも、時短での復職を希望だったので、私の仕事をサポートできる方を増やしてもらったり、引き継ぎに関しても不安はありませんでした。結局、仕事のことは切り離していかないと、1人目のときは育児自体が初めてですから、仕事まで気になると大変だと思いました。予定していた産前休暇より早くお休みさせて頂くというトラブルがありましたが、育児だけに専念させてもらう状態っていうのを会社がつくってくれたかなと思います。
藤木 担当していた仕事の中で、私がメインの大きい仕事をどうするっていう悩みはありました。繁忙期は残業も相当していたし…。ただ第 1 子の妊娠初期で切迫流産になってしまったときに、「妊婦に無理させられへん」って、上司がすごく配慮してくださったんです。残業も極力なくしてくれて、引き継ぎに専念させてくださいました。その経緯があったから、あまり戻った後のことも心配してませんでした。実際、仕事の内容も量も、復帰後とても考えてくださってました。多くのママが悩む、急な早退(有休)も「いいから早よ帰ったれ!」と快く帰してくれるのも有難たいです。
中野 育休とることに関して、ご家族の反応はどうでしたか。
藤木 家族からは「取れない中小企業も多い中で、育休取らしてくれはるのはええ会社やな」って言われました。
石橋 夫とは出産後は早いうちに復職すると話し合っていたのでスムーズだったと思います。でも、それでもやっぱり東京支店は人数が少ない中で育休取って、また復職してっていうのに対して、会社がどう判断されるかっていう心配はありましたが、当たり前に受け容れてもらえ、状況も整えて頂けました。1 人目のときは、夫も育児休暇を 3 カ月ぐらい取りました。初めての育児を 2 人でする時間を設けるために取ったんです。
中野 厚生労働省の要請で、今年10月からは、産後8週間以内に取得できる「産後パパ育休」 が使えるようになる他、2023 年からは大企業を対象に育休取得率の公表が義務付けられるので、今後は、男性の育休取得も進むでしょうね。それにしても、2017年の段階で、育休取得された石橋さんの夫さんは、随分意識高い方ですね。僕も将来的には、パパ育児に参加して、お互いの仕事と育児の両立を目指さねば、と強く思いました。
遊文舎における育児休暇取得状況
<育児・介護休業規程> 2009 年 12 月 18 日施行以降

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