遊文舎から「1970年大阪万博」の本を出版!
2026年8月26日、『1970年大阪万博 パビリオン巡礼の旅』(橋爪紳也・小谷洋介 著)が刊行されました。クライアント様から約1年前にご相談をいただき、遊文舎では装幀デザイン、本文組版、印刷、出版までをトータルで担当しました。
実は遊文舎では出版事業も行っており、本をつくるだけでなく、出版後の流通まで対応することができます。今回も、企画から完成、そして出版に至るまで、社内外の多くの方が関わりながら一冊の本をつくり上げました。その制作過程では、各部署の関係者がさまざまな壁に直面しました。今号では、その制作の裏側と奮闘の様子をお届けします。
ISBN978-4-910433-59-2 C0060
B5変形・154ページ 定価2,970円
この本は1970年大阪万博の閉幕後、国内外へ移ったパビリオン、施設、展示物、装飾品、モニュメント等、およそ50点以上の「その後」を追跡した一冊です。すでに取り壊されたものの、かつて移設されていたパビリオンや展示物も多数あり、移設にまつわる経緯や裏話なども紹介されています。30年以上にわたって追究してきた移設調査の集大成ともいえる内容です。
また、現在、万博記念公園内のEXPO’70パビリオンで開催されている企画展『1970年大阪万博ビフォー・アフター展 ~あのパビリオンはいまどこに?~ 2026』の関連書籍でもあります。
装幀デザイン
クライアント様からある程度お任せいただいていたため、まず草稿段階の原稿を拝見し、そのうえで3月にスタートした企画展を訪れました。
展示の中で制作陣の印象に強く残ったのは、パビリオンや施設がどこに移設されたかを日本地図に示した大きなパネルです。本のタイトルは「巡礼の旅」。長年にわたって研究を続けてこられた著者の思いを表現するのにもピッタリだと感じ、「この地図を表紙のデザインに使えないか」と、みんなでアイデアを出し合いました。
本のサイズは、図録でありながらも読み物としての要素もあることから、写真も大きく掲載できるB5サイズをベースにしました。
ただ、通常の表紙では広げてもB4程度の大きさです。そこに地図を大きく入れると、本のタイトルや著者名などを入れるスペースがありません。そこで考えたのが、表紙の片側だけをB5・3面分の長さにし、Z折りにする案でした。
さっそく協力会社の藤原製本さんに相談をし、束見本をお願いしました。「できるかやってみないと何とも言えません」とのことでしたが、見事に形にしてくださいました。
後日聞いた話では、Z折りした表紙がふわっと浮いてしまい、本文と表紙を接着する機械にうまく入らなかったそうです。そのため、浮かないようにZ折り部分を1枚ずつセロテープで固定して作業してくださったとのことでした(藤原製本さん、本当にありがとうございました)。
そして、この特徴的な表紙が、後でとんでもない作業を招くことになるのですが……その話は後ほどご紹介します。
用紙
もちろん、印刷用紙もこちらで選定しました。中でも特に本文の用紙にはこだわり、さまざまな本を参考にしながら検討を重ねました。
当初は手触りのある「b7トラネクスト」を候補にしていましたが、作成部数も多かったこともあり、必要な在庫を確保できませんでした。
そこで次に候補になったのが「モンテルキア」という用紙です。今号の『遊文通信』に使用している用紙で、b7トラネクストと雰囲気が近く、実際の印刷機で本機校正を行いました。雰囲気はとても良かったのですが、想定していたより色が沈み、1970年大阪万博のロゴカラーの再現性が十分でなかったため、使用を断念しました。
その後もさまざまな用紙を選んでは試してみましたが、最終的には色が沈みにくく発色の良い「ユトリログロスマットナチュラル」を採用しました。
実際の本番印刷にも関係者で立ち会いました。特に万博カラーの赤と青は最後まで気になっていましたが、印刷オペレーター2人の調整は見事で、狙いどおりの色に仕上げてくれました。
帯
打ち合わせが進んでいく中、「帯文を河森正治先生に書いていただくことになりました」と知らせが入りました。アニメーション監督で、2025年 大阪・関西万博でもテーマ事業プロデューサーを務められた河森先生。その推薦文が帯に入ることになり、さらに気合いが入りました。
ただ、ここでふと、「帯掛けのことをあまり意識していなかったな……」と思い、改めて藤原製本さんに相談しました。返ってきた答えは「あの表紙に機械で帯を掛けることはできないので、内職作業になります」とのこと。これは完全に想定外でした。
でも、ここまできて後戻りはできません。もう、これはやり切るしかない……。そこで、社員総動員で帯掛けの内職作業を行いました。決して広くはない社屋は、一時期、万博の本で溢れ返りました。
販売・見どころ
現在、この本は万博記念公園内のEXPO’70パビリオン、大阪モノレールの万博記念公園駅近くにある「EXPO GOODSSTORE」のほか、Amazonや楽天ブックスなど各ECサイトで販売されています。
全編フルカラーで、1970年大阪万博当時の貴重な写真も多数掲載されており、見応えは十分です。しかし何より注目していただきたいのは、著者の橋爪先生が長きにわたり続けてこられた調査と、そのバトンを受け取った小谷さん、お二人が積み重ねた移設調査の記録です。後半では、万博会場跡地が万博記念公園になるまでの歩みや、太陽の塔の撤去騒動の話しなども紹介されており、こちらもとても興味深い内容になっています。
是非、みなさんも手に取っていただき、ご一読いただければ幸いです。
(営業部 マネージャー 河野行俊)





