No.125 ｜ 2022年9月号

成功させた「新しい働き方」嵐山デザインガレージ合同会社　たけうちとおる

独立 → 創業へ

　2016 年当時、私は遊文舎の社員でしたが、どうしても自分の力を試したくなり起業を決意しました。
　起業するとなると会社を辞めることになります。そうなると収入も不安になります。また遊文舎でも重要な仕事をいくつか担当していましたし、たくさんの仲間にも迷惑をかけることになります。また会社を辞めるなら円満に、良好な関係を築いておきたいと思いました。
　そこで週3 回の外注契約にしてもらえないか相談することにしました。もともと最初に遊文舎に呼んでいただいた時、週3 回の契約で、その後社員にしていただいたのですが、最初の状態に戻してもらおうという作戦です。「辞めて迷惑をおかけするのに、仕事をするので一定額は保証して欲しい」というわがままな相談で、怒られるかと思ったのですが、社長・会長・専務に快諾いただきました。同時に応援もしていただき、特に専務に「奥さんにも安心するように伝えてあげて」という気遣いがほんとうに有り難かったです。会長夫妻は私から見て起業家の大先輩ですし、社長は経営者として社員の生活をまもるというかなり大変なポジンションだということは、起業してからよくわかりました。

新しい働き方

　こうして嵐山デザインガレージを創業し、新しい働き方で遊文舎に関わるようになりました。この働き方はかなり先進的だと思うのですが、週3 回で（現在は週2 回）遊文舎の業務をざっくりとした範囲で受け持ち、残りの日は自身の仕事を京都で進めていきます。遊文舎からの仕事が受け持ち業務の範囲を大きく超えるような場合は、嵐山デザインガレージとして、別途仕事を受注することもあります。
　こうした働き方にはけっこうメリットがあります。例えば遊文舎に退職者がでた時には、安定するまでサポートすることができます。制作に仕事があふれる繁忙期には多めにお手伝いをして閑散期に調節もできますし、外注としても近くにいるので頼みやすく短納期にも対応できます。私でないとできないようなシステム的な提案も、遊文舎の強みとしていつでも協力できるので、新しい働き方としてうまくいっている好例なんじゃないかなと思っています。私にとっても安定した収入があるということは非常にありがたく、売り上げが低い時なんかは安心することができます。

インターネット情報サービス

　嵐山デザインガレージでは「ナンプレ（数独）」や「ジグソーパズル」「脳トレ」などのパズルゲームを提供しています。こういうビジネスを「インターネット情報サービス」ともいいますが、大人が落ち着いて楽しむ、ちょっと知的なパズルゲームという、若い人が楽しむソシャゲとかとは少し違うジャンルに取り組んでいます。これらのコンテンツを作って楽しんでもらうのがメインの仕事で、日々新しい企画やメンテナンスをしています。ほかにもシステムを受注したりDTP を受注することもあります。
　特に「ナンプレ京」というパズルサイトはびっくりするぐらいの訪問があり、通常のビジネスサイトと比べると桁外れの流入があります。もっともっと育てたいのですがなかなかこれが難しくたいへんです。
　また iPhone・Androidアプリもリリースしています。アプリの販促は遊文舎で学んだ「すぐスール」の販促を生かして、少額ながらGoogle 広告を使っています。アプリに関してはしっかりユーザを獲得すると相当な売り上げが見込めますので、力を入れているジャンルです。

これからも良い関係で

　こうして良い関係を遊文舎と嵐山デザインガレージは続けていると思います。本来なら退職でそれっきりでもおかしくないのですが、そこを応援していただけるというのも、もともと柔軟な考え方をする遊文舎らしい土壌があったのではないかと思います。京都には起業家仲間が多いのですが、そういう話をすると「それは素晴らしいね」とか「信じられない」といった驚きの声もあり、これから起業する人には参考となっているようです。
　今後も嵐山デザインガレージのノウハウ（ システム開発・アプリ作成・AmazonのKindle出版など） もフィードバックしたり、遊文舎と一緒になって新しいビジネスを提案したりなど良い関係を続けていければと思っています。