No.97 | 2019年10月号
最新デジタル印刷とインクジェット技術
最近の印刷業界では、コンベンショナル印刷という言葉が使われだしています。伝統的ということで、従来の活版印刷・オフセット印刷・シルク印刷・グラビア印刷等を一括して言います。対峙するのは無版方式のデジタル印刷です。遊文舎では現在、オフセット印刷機3 台・デジタル印刷機6 台の構成となっていますが、生産量ではオフセット印刷のほうがまだまだリードしています。今後のデジタル印刷への分岐点はどうなのか。この度、総勢7 人で東京メーカー2 社を訪問し、最新鋭デジタル印刷機のデモを体験してきました。
デジタル印刷はここまで進化した!
大量部数はオフセット、少部数はデジタルというのが一般的な認識ですが、今回のデモでは、ただ単に「少部数(多品種)のためのデジタル」ということだけではなく、デジタル印刷機自体の性能や色再現の素晴らしさを改めて体感しました。従来は、A 3 (菊4 )までのサイズが上限だったのに対し、A 2 ワイドやB 2 、長尺まで印刷できるように進化していました。また、色再現の面でも長期使用により起こる色差が最小限に抑えられたり、よりRGB に近いものが表現できたりと、昨今お客様が求める多様なニーズに対して、簡単、スピーディーに対応できるようになったと感じました。
ここが良い!と思ったデジタル印刷機
■「SCREEN ホールディングス XEIKON 9800」
ロールでの給紙が可能で、しかも両面同時印刷が可能。
①同じ用紙の印刷物を集めてジョブを用意すればほぼ連続的に印刷ができ紙積みなどの手間が軽減できる。
②両面同時に印刷できるので特にページものなどでは用紙の伸縮等による見当のズレが解消される。
③オフセットのようにインクの渇きを待たず、そのまま折り加工までワンラインで可能。
④ロール紙なので枚葉印刷のように2 枚通しによるロスの心配がなく、薄紙も印刷ができる。
■「富士フイルム JetRress750S」
B 2 サイズまで対応でき、枚葉印刷でありながら印刷スピードも速く、また色の再現性は素晴らしい。
①広色域・高発色の水性顔料インクでプロセス( 4 色)印刷よりも再現性が広い(品質の向上)
②生産性を考慮し、印刷中の紙浮きなどを自動で修復(ダウンタイムの軽減)
③検知機能も優れておりノズル不良による超微細な白スジ等もスキャンできる(検品作業の軽減・不良品混入を防ぐ)
④操作が簡単、またバーコードによる作業情報伝達など、熟練工でなくても高品質なものが安定して生産できる(品質の安定)
納期・コスト面でもユーザーライクに
いずれにしても生産性自体はまだオフセット印刷機には劣りますが、中間工程が省かれることにより他のワークフローにも影響し、納期等においてお客様への対応の幅を広げることができます。またオフセット印刷のように刷版(CTP)を必要としない等、製版料金が省かれることで従来の印刷積算方法を脱し、コスト面でも新たな価格帯を生み出すこともできると思いました。新たなテクノロジーですので、職業としても魅力が増すでしょう。
もちろん従来のコンベンショナル印刷にもすばらしいメリットがあり、デジタル印刷と共存しながら発展していくことが大事なんですかね…。それにしても、情報を紙に転写する技術っていろいろあってすごいなぁ〜と改めて感じました。
(こん)
▲ 大阪から5 人、東京から2 人の遊文舎メンバーがデモを体験させていただきました。