No.63 | 2016年8月号
シンギュラリテイ、X デーは2035年!?未知なる近未来に思いを馳せて
21世紀に入り、紛れもなく世界は変革しました。そう、インターネットとコンピュータテクノロジーがもたらしたIT 革命です。現在急速に、「第4 次産業革命」が進んでいます。あらゆるものがインターネットにつながり(Internet of Things = IoT)、人工知能(AI)で動くロボット社会がまさに現実のものになろうとしています。その一つの到達点、シンギュラリテイ(人工知能が人間の知能を凌駕する)のX デーは20年後の2035年という説さえあります。何がどう変わるのか、わたしたちは今後どう歩んでいくべきなのか、真剣に考えるべき正念場です。
このたび、いつも遊文舎の業務に協力いただいている富士ゼロックスの杉田様にスペシャルレポートを寄稿いただくことができました。皆様方の今後の指針の一助としてお役に立てれば幸いです。
(編集部)
第三次も第四次も基本は「情報通信革命」
18世紀の第一次産業革命は、水力/蒸気といったエネルギー革命、19世紀の第二次はベルトコンベアーや工作機械による大量生産革命。これに対して第三次は情報流通革命。大量生産と均質化が進む中で、「情報」そのものが差別化価値を産む源泉となる世界。インターネットや検索エンジン等による情報の飛躍的な流通とアクセスが進み、多様なニーズにマッチする商品・サービスが地域や時間を越えて認知・流通することになりました。
さて、次なる第四次は、すべてのモノがインターネットにつながる事(IoT)と、それにより蓄積される膨大なビッグデータを解釈し、学び、推測する人口知能(AI)による「価値創造革命」です(図1 )。AI の機能は大きく二つあり、雑多なビッグデータから「意味を見出し推測する」機能と「自ら学習し適応する」機能です。これまでの商品開発は、お客様の声や保守情報等を分析して行いますが、第四次では、AI がそういう情報をリアルタイムで、解析・学習・推測し、新たな価値創りに貢献していきます。
では、IoT とAI の組み合わせで商品・サービスはどう変わるのでしょうか。大きくいって①カストマイズ化と②リアルタイム化だと考えます。
図1 .情報通信革命としての第三次と第四次の比較

①カストマイズ化(パーソナライズ化)
香水に例えると、AI が「私」の嗜好や使用するTPO を解析し、「私の香水」の調合指示を出すような事です。利用者が増えるほど学習効果が働き、さらに適切な配合を行うと思います。これには一個づつ違う商品を作る生産プロセスが重要であり、大規模工場は不要です。
②リアルタイム化
これは、モノに仕込まれたセンサーとAI の対話による商品・サービス価値の創造です。今でも最新エアコンは体温や位置などを解析して快適な空間を演出し、最新の車は車間距離やブレーキのタイミングなどを解析して安全運転を支援します。第四次では、商品単位を超えて、家とか旅行とかの「空間全体」での価値創造に向かいます。たとえば、家自体が様々なセンサーを持ちIoT 化すれば、家族やペットの動きや、機器の使用状況等をリアルタイムで解析し、家が「AI 執事」となり、より良い生活創りのリフォーム提案を行う可能性もあります。
そのような変革の中で、中小企業にとっての第四次の機会と脅威はどのようなものなのでしょうか。
(続く)
(富士ゼロックス株式会社 マーケティング部 杉田 晴紀)