No.3 | 2010年8月号
どうして突然電子出版元年になったのか
国産携帯のT-Time(小説)やブックサーフィン(コミック)などの方がはるかにシェアを獲得できるのになぜ急に電子出版元年になったのか。やはりiPad の画面サイズと、本を読むという体験そのものを変えてしまうかもしれないデバイスの魅力によって、電子書籍の流れが動いたのかなと考えます。また、Apple やAmazon が参戦というニュース+個人出版も比較的たやすくできそうで夢が広がるところも魅力です。
ただ問題もまだまだたくさんあります。
フォーマット乱立の問題
Apple やAmazon が日本での体制を整えていないため、その隙にどこもがApple、Amazon の椅子を狙おうと電子書店が乱立。フォーマットも乱立です。東京ブックフェアでは10店ほどがウチで本を出して下さいとアピール合戦。そこにGoogle まで参入し、まったくユーザ無視のひどい状態に陥っています。
課金の問題
電子出版するという事はやはりそこでお金を稼がないといけないわけで、となると課金をどうするかという問題とDRM(デジタル著作権管理)の問題。そういう意味でApple のiBooks の存在は課金とDRM を小さな出版社や個人出版でも比較的簡単にクリアしてくれます。
見せ方の問題
雑誌的なレイアウトを崩せないものはPDF のように拡大縮小して表示。制作は楽でコストも少なくすみますが、画面の小さいスマートフォンユーザーには使いにくいです。
小説的な文字の拡大縮小ができ読みやすいようにしたいものにはAppleが採用したePub やT-Time やモリサワのMCBook などが出ています。ただし、ePub は縦組みできません。
埋没するという問題
ただ本をそのまま電子出版するのでは本は売れなさそうです。デバイスに合わせたコンセプトをもって制作する必要がありそうです。Apple のiBooks で販売しても当然埋もれてしまうと思われ、どう広告していくか、そこも難しい問題です。
電子出版はもうからない問題
電子書籍は本より価格は下がるしAppleやAmazon に30%払わないといけないので、制作費や編集料金、著者への著作権など実はもうからないという話。ただし個人で出す分には問題ありません。今後は編集した本の良さをユーザにも認識してもらわないといけません。
以上のように問題点はいっぱいです。また、電子書籍は1ヶ月ぐらいで情報が大きく動きます。現在の新しい動きには次のようなものがあります。
Amazon
書籍代に通信費が含まれている新しい販売方式を使っているのがAmazonです。購入した本は携帯電話回線を使ってキンドルに本が自動配信されます。月々の通信費を気にする事なく本を購入する事が出来ます。(この通信事業をdocomoが取れるかも注目)
シャープ
独自端末を出すというニュースが流れましたが、こちらはシャープ独自のフォーマット。出版社は書籍を出すたびにシャープにロイヤリティを払わなくてはいけないので、反対派が多数ブログに記事を書いています。
こんな状態の電子書籍。今はとてもおもしろい状態ですが、今後もますますフォーマットの乱立と囲い込み戦略がつづくとおもわれます。これらはユーザ不在でメーカーだけが盛り上がっているという状態でもありますので、しばらくは静観もありでしょう。
遊文舎としても、判断をあやまらないよう気をつけ、小規模な出版をお手伝いできるよう日々研究中です。個人的にはもっと手軽な出版を実現して大手出版社にひとあわふかせたいと思い、HTML5をつかって日々実験中です。もしよろしければデモさせていただきますので、営業にお声掛け下さい。
(たけうちとおる)
栄光の架け橋 第3回
第3回は株式会社セレクトさんです。
今のネット時代『活字の優位性』について進化を求め続ける
寺田社長にお話をお聞きしました。
ー株式会社セレクト(以下セレクト)についてお聞きしたいのですが…
月刊セレクトはギフト、プレミアム、カレンダーの業界専門誌です。結婚式やお葬式、赤ちゃんの誕生や新入学には必ずお祝いや香典が発生します。その際にいただいた金額の半分をお礼の気持ちを込めて品物でお返しします。この時の商品やカタログを流通させ、カタログを発行するのが“ギフト業界”です。
またギフト業界では、企業や商店は周年記念や開店記念、法人は売上達成感謝品や退職記念などインセンティブや販促品を使いますが、そうした商材をSP 用品と総称して取り扱っています。もちろんこのSP には年末に企業が配るカレンダーが含まれ、それらの流通情報や動向を取材・報道しているのが『月刊セレクト』です。
ー毎月月刊誌の発行をお手伝いさせて頂いておりますが、何かご意見はありますでしょうか。
目下、ホームページを大幅にリニューアル中です。速報をHP 上で、詳細は月刊誌でという体制にできるだけ早くもって行きたいと頑張っています。これには読者、スポンサーはもとより印刷会社(遊文舎さん)の御協力がなければ成し得ません。
つきましては、他社の成功事例を含めて、アドバイスをいただきたいと思います。ニュースをアップするなど“速報”をテストしていますが、HP と印刷媒体の連動という点ではまるっきり別な作業のように感じているからです。よろしくお願いします。
ー聞きにくいことですが、遊文舎の印象をお聞かせ願いたいのですが。
前の印刷会社から遊文舎さんに移行する際に、DTP に関して随分ご指導いただきました。お陰様で今では80 ~ 85%ぐらいがデーター渡しとなっています。営業の方も知識が豊富で、対応がよく、月刊誌という短い納期(サイクル)をよくこなして頂いています。
取材写真は二度撮りができません。なかにはピンの甘い写真、暗いもの、ハレーション寸前のものまで、失敗気味の写真でもかなりの精度で見やすい写真に調整加工して頂けます。この技術は素晴らしく、たいへん感謝しております。
セレクト社内
ー最後に何か一言お願いします。
ギフト業界は別名、カタログ業界と言われて来ました。分厚い総合カタログ、好きなモノが選べるチョイスカタログはじめ対象を絞った出産や香典返しのカタログなどを使って営業してきましたが、最近はそうした紙媒体とWEB との併用が登場してきました。
ただ、いくらネットが発達しても“活字(印刷媒体)がもつ瞬時の理解力やインパクト”に勝るものは当分は出現しないと考えます。それだけにこの『活字の優位性』についての理論武装と新しい表現方法などについて遊文舎さんにご指導いただきたいと思います。
(聞き手:だーくん)