No.122 | 2022年4月号
M&A後の一年を語る〈その2〉京都 双林株式会社 & 東京 株式会社遊文舎
京都のグループ会社双林と遊文舎東京支店の未来を紡ぐDISCUSSION 第2 弾です。コロナ禍も収束にむかいつつあり、回復に向かうであろう市況を協業でいかに切り開いてゆくのか。また今後も予測される同様の外部環境の変化に、柔軟に対応しうるしなやかな組織をどう構築するのか。印刷技術を通じて社会に貢献していく過程で、人も組織もまた確かな成長を育み、それがお客様への貢献につながっていくだろうことを期待できる内容となりました。
出席者
双林株式会社
宮腰 勇二(企画営業課)
鳥居いづみ(経営企画課)
岡本菜々美(企画営業課)
聞き手
株式会社遊文舎 東京支店
佐地 覚(営業グループ)
中野 瞬(営業グループ)
(前号からの続き……)
中野 私はまだ双林さんにお伺いできてないんですけど、遊文舎との協業が徐々に進みだしていることは伺っています。その過程で営業として思うところ、今後の課題的なものはありますか?
宮腰 双方の仕事の進め方、培われてきたものが異なりますので、そのすりあわせは今後も進めていく必要はあると思います。例えば双林はこれまでカラー印刷の品質を売りにやってきました。しかし全ての案件に対して同等の品質を提供すると、時として「過剰品質」につながる。品質よりもスピードやコストが求められる案件も多くある。お客様のニーズを的確に汲み取って最適の商品サービス提供フローを構築するのが営業の仕事だと。確かにこれまで双林は案件に関わりなく品質最重視でしたので、そこで割に合わない小口の案件をしっかり扱っていませんでした。遊文舎は取り扱う案件数が双林の桁違いで、とにかくスタッフのみなさんの対応が速い。それがお客様に受け入れられていると。そこは大いに見習いたいと思います。
中野
私も営業してる中で、お客様から「そこまでは他の印刷会社ってやってくれないんだよね」とか逆に、「他の印刷会社だとここまでやってくれるんだよね」っていうようなお話をお伺いすることあります。確かに、同じような商業印刷の会社がグループ会社だと、いろんな情報交換できるので、その辺もいいところかなと、思いましたね。
鳥居さんの経営企画の分野でも、何かありますか。
鳥居 協業が進んで助かっているのは遊文舎の総務経理の棚橋さんと土井さんという仲間ができたことです。経営企画スタッフとして社長に「この規模の会社で、鳥居ならバックヤード業務は一人でやりきれるからお願いしますよ」と言われて途方に暮れていました。もちろん双林メンバーも助けてくれていますが、困ったときに相談できる仲間ができた。こんな心強いことはありません。
中野 先ほど、宮腰さんからも、拠点がいろいろあるっていうところでお話を伺いました。実際に今、東京には私たち東京支店と、DAI プランニングっていう、インストアプロモーションっていう形でやっている会社もあり、大阪の本社も含めると4 拠点になるっていうところで、グループとしてのメリットとか実感されたりしますか。
宮腰
双林の場合は京都営業がメインなんですけど、僕今、大阪担当が多いんです。大阪の摂津とか高槻とか北摂周辺のお客様、新大阪の駅の近くにもスポーツイベント関係のお客さまがいるんですね。今後の展開では、大阪で僕がもらったデータを、文字組的なものだったら遊文舎さんのほうで製版や印刷をお願いするっていうメリットは、出てくることもあるのかな、とは思っています。時間的なロスがあったのを少しでも改善できることもあるんじゃないかなと。
あと、先ほどおっしゃったDAI プランニングさんですね。食品スーパーなど流通業のお客様に対して販促的な企画提案から仕事をされてるんですね。どちらかというと、双林の場合は、企画立案っていうのはちょっと弱いんですよね。この印刷業の先を見据えると、川上で仕事を取って、あと流していくというパターンはどうしても必要になってくると思いますので、DAI プランニングさんや遊文舎のデザイン課さんとかの、コミュニケーションを深めていくことは力になると思います。営業は営業同士でやりたいですね。

▲ 双林・菊全4 色機は、日々、品質至上です。

▲ 双林では毎朝Zoom を使用して朝礼を行っています。
中野 コロナで遊文舎の東京と大阪も交流全然できてないですし、早くコロナ終わってみんなで前向きなリアル集会したいですね。楽しみです。鳥居さん、遊文舎に対して、こういうところがあったらいいなとか、期待することとか、何かありますか。
鳥居 まずは双林単体でももっと努力して、結果、グループみんな幸せになれたらいいなっていうところに行きたいと思っています。遊文舎にたいする期待というのは、多分それ以降の話かなということで。でも社長には、「今の業績は確かに良くないけどここには、働く人と協力してくれる人とお客さまがちゃんといるから100%良くなる、後はやり方だけ」と言ってもらってその言葉を信じて、みんな頑張ってやってます。
中野 僕も一緒に頑張っていけたら嬉しいです。岡本さんは、まだ5 カ月っていうこともあると思うんですけれども、遊文舎に対して、期待するところはありますか。
岡本 私、営業サポートっていう部署が初めてですので、もっとこういう仕事のやり方したらいいよとか、遊文舎の営業推進さんからそういう情報共有、いただけたらうれしいなと思っています。前職で印刷営業やってましたので、サポートが営業力を強力に底上げするのは理解してるつもりです。自分が新天地で実際その立場になって、もっと業務をブラッシュアップするために、一緒に上を向く仲間になっていけたらと強く思います。
中野 確かにそうですよね。業界全体の印刷技術も向上していて最終的な印刷物の品質については各社大体、同じかなっていうところも正直ありますよね。けれど営業推進が担う、プロセスやアフターフォロー、サービスの部分って、結構会社によってノウハウの差が出るところかなと思います。木原社長は酒が好きなのでよく食べ物屋さんのたとえ話をしますが、「食べ物屋さんで出てくるものがまずいって論外だろ、印刷も印刷のあがりが普通に良いなんて当たり前。食べ物屋さんも印刷会社もお客様はもっと違うところを見てる。それが何か理解するためにお客様とよく話をしろ」って言い方をします。宮腰さんは、営業部門として遊文舎に期待することはありますか。
宮腰
まずは単独でちゃんと黒字を出せる企業にならないと、営業ですから特に強く自覚しないとあかんとは思ってはいます。うちの社員全員それは強く思ってます。本当に1 人でちゃんと歩いていけるように、もう一回立ち直らなあかん状況かなとは、僕も思ってます。
また、双林に出戻って衝撃を受けたのが、遊文舎のシステムが導入されていて、案件ごとの進捗状況とか原価管理がデータベース上で全従業員に可視化されていたことです。M & A 前までは、伝票も手書きだったんです、昔から変わらず。昔の双林のときは、本当に、出社しないと仕事できへんっていう状況で、電子機器は携帯だけ。一年間で全く別の会社になったと思います。なおかつ、営業サポートが二人いるので、営業が外出する時、これ伝票打っといて、これデザイン課のほうにこんな感じにって言うといてって、彼女らに任せることもできる。例えば、僕が病気で休まなあかんとなっても、誰かがちゃんとフォローできるっていう形に、働き方も従業員の意識も変わってきてると思います。
佐地 今まで手書き伝票だったものが、いきなりシステムに全部入力しろ、みたいなところで、社内で抵抗とかなかったですか。今までどおりのほうがいいのにとか、面倒だとか。
宮腰 営業はもう手書きが大変やったんです。営業回って、例えば5 点ぐらい受注してくるじゃないですか。それを伝票書くのだけでも下手したら30 分かかるんですよ。逆にシステムになって、めちゃくちゃ楽になりました。ただ、最初のときは、めっちゃ戸惑いました。正直不安はありましたけど、でも、やっぱり何かを変えるってなったら絶対、摩擦とか出てくるものですよね。そこを今、みんなで乗り越えて、うまくメンバーを巻き込みながらやりきりました。
佐地 総務の点からいうと、鳥居さんのほう、どうですか。システム入れられてから作業内容、変わったりしました?
鳥居 そうですね。いろいろ試してるんですけど、従来から当社の中で必要だった情報を、システムから抽出するっていうところで、まだ試行錯誤中です。ただ私の立場から言うと、過去の無駄な作業、重複して手入力するような作業っていうのが、どんどん減っていってますし、そういうことも意見として言って、以前と違って聞き入れてもらえたりとか、すごくするので。このシステム導入で、前進していってると感じています。
佐地 鳥居さんは、コロナ前とコロナ後というところで、何か業務内容とかって変わったりしました?
鳥居 以前は、経営が苦しい会社でもあり、そういうところにお金をかけてやろうっていう体力もなかったので、リモートができるようになったっていうのも、すっごい前進したっていうふうに思っています。また木原社長はとにかく決断、イエスノーを決めるのがびっくりするぐらい速い方で、とりあえず保留ということを言わない方なので、一緒に働いていて快適なんです。こういうことが発生して困ってるのでこうしたいですっていう意見は、すぐ社長に言って。風通しのいい会社になってきてると思ってます。
中野 新しい体制になって大変なこともあると思いますが、遊文舎グループの一員としてそういっていただけると私も嬉しく思います。本日はみなさんの想いを直接伺えてよかったです。ありがとうございました。新しい仲間と一緒に今後も関わる人全員が幸せになれるよう、協力してやっていきましょう。

▲ 双林株式会社 正面入り口にて