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News Letter『遊文通信』

写植の時代展

 「大阪DTP の勉強部屋」主催の「写植の時代展」が2012年2月17日(金)〜21日(火)大阪メビック扇町で開催されました。弊社もわずかながら協力させて頂いております。
 この展覧会は本当に稼働する手動写植機が展示の目玉で、ベテランの職人さんに教えてもらいながら写植を打つ事ができます。当日は若いDTP デザイナーの順番を待つ列が途切れる事はありませんでした。
 また写植の歴史やしくみの説明映像・パネル展示、写植文字盤展示もあり、当時を懐かしむ人やはじめて見る人の感心する声があちこちから聞こえてきました。
 18日(土)には「はじめての正規表現」をテーマに勉強会も開催され、弊社でも3人受講させていただきました。「大阪DTP の勉強部屋」では東西からおもしろい講師の方をお招きしてこういう会を定期的に開催されています。
 懇親会では滅多に聞けない情報交換ができるのも魅力です。
 21日(火)には「写植の時代を語る」座談会があったそうです。残念ながら行く事はできなかったのですが、かなり面白かったとの事です。

 さて、写植とはその昔、といっても1995年ぐらいまではまだまだ現役でした。今のDTP ではテキストフレームに文字を入力すればそのまま印刷できますが、当時は文字は全て写植です。1文字1文字、職人さんの手で文字盤から選ばれ印字されていたのでした。
 もちろん弊社にも写植機はあったわけで、今も遊文舎の玄関にはモリサワさんの写植機が展示されており毎日社員を見守っています。会社には以前写植機をさわっていた社員も何人かいます。
 この写植、私がデザイナーを始めた頃はまだまだ全盛期で駆け出しデザイナーが作った原稿でもベテランの写植職人さんの手によって組まれた文字のおかげでずいぶんカッコよく校正が上がっていたのを憶えています。
 「写植の時代展」の小冊子を読むと高度経済成長期やバブルの頃は写植という職業も大きく伸び上がり、普通の会社員の年収ぐらいを1ヶ月で稼ぐ事ができたそうです。写植屋さんで5年程修行した若者は「のれんわけ」してもらい、高価な写植機を師匠からもらったり、買ったりして独立していったそうです。
 仕事は山ほどありました。なにしろ景気がいいので雑誌もどんどん創刊され、その中の文字は全て職人さんが打ったものでした。
 いまからはとても考えられない時代です。
 そんなアメリカンドリームのような時代もデジタル化のあおりを一気に受けて消えて行きます。

 印刷業界はデジタル化によって大きく仕事が変革していっためずらしい業種です。
 写植も版下も製版も消えていき明確に分業されていた仕事はデザイナー1人でフィニッシュまで作れるようになったかわりに、全ての責任もデザイナーに集中していきました。
 当時写植を打っていた人たちも残らず消えていきました。
 その方々はこのままでは仕事が無くなると一生懸命Macintoshを覚えようとしていました。
 でもすっかり写植機が自分の手のように動かせるようになったおじさんには、マウスでベジェ曲線を引く等なかなか覚えられません。僕は当時駆け出しデザイナーだったのですがベテランの版下担当の方にIllustrator を教えたりしたものでした。
 そんな職人さんの努力もむなしく、Macintosh のオペレーションは写植職人のものではなくデザイナーの物になりました。ベテランの写植職人さんの美しい文字組は引き継がれることは無く、コンピュータが計算で組み、デザイナーが手動で体裁を整えていったりしました。
 この「写植の時代展」はそんなノスタルジックな気分にひたるための展覧会ではなく今のDTP に欠けているモノ、必要なモノを提示したいとの事です。
 当時写植職人だったおじさんたちも何人かはDTP の文字組職人に生まれかわり、へたくそな文字組のアプリケーションに文句を言いながら、カスタマイズして納得のいく組版をされています。そんな方々が何人もいらっしゃって、当時の貴重なお話を聞かせてくれました。

「写植の時代展」小冊子(弊社印刷)

展示されているモリサワ手動写植機。
実稼働する貴重な機種

まるでアート作品のような文字盤。
いまとなってはゴミなのかもしれない

 「写植の時代展」会期終了後もパンフは手に入りますし、写植機の展示も機会があればまたしたいとの事です。
 興味がある方は「大阪DTP の勉強部屋」で検索し、主宰の宮地さんにコンタクトをとってもらえればと思います。

(たけうちとおる)

栄光の架け橋 14

第14回は帝塚山大学出版会さんにお伺いし、
担当者の安田様にお話をお聞きしました。

クーターバインディング製本により製作した
「大学生のための日本語の基礎 入門編」を手にする安田さん

―帝塚山大学出版会についてお聞かせください

 本会は平成18 年に帝塚山大学の研究・教育の成果の発表を助成すること、我が国の学術・教育・文化の振興・発展に寄与することを目的として設立されました。昨年設立5 周年を迎えたばかりで、歴史は浅いのですが、年間3 点の刊行を目標に活動を続けています。

―今特に力を入れられているのは何でしょうか

 本学に出版会が設置されているということの社会への周知と出版企画の発掘です。本会の存在が学外にはほとんど認知されていないため、設立5周年を迎えた昨年は、学会やシンポジウム、公開講座の会場等において積極的にブース出展を行い、本会活動の周知に努めました。また、新刊書が出た折には広範囲に情報発信を行い、おかげさまでいくつかのメディアで取り上げていただきました。流通についても昨年「amazon」での販売を開始。今後は全国的な展開ができればと思っています。また、出版企画の発掘については、本学教員は教育・研究において大変優れた実績や成果をあげており、その取組や内容に目を配っています。学内外に出せる「売り」があれば、出版企画書の作成を助言する等、書籍化に向けてサポートしています。

―遊文舎の印象はいかがですか

 本会では、学術書や学生用テキストを刊行しています。学術書はその性格上、とくに重厚感や信頼性が、またテキストにはわかりやすさ、使いやすさが求められますが、遊文舎様の提案はそれらの要件を満たしています。また、本会の注文にも的確に対応くださっています。具体的にはテキスト製作の際に、通常の製本方法ですと綴じが強いため、使いにくいことに悩んでおりました。そのため、遊文舎様に各所お調べいただき、クーターバインディング製本という、綴じ強度を維持し、かつ開きやすい型の本を出版できました。このテキストは内容的にもかなり好評で、他大学でも使用されています。

―今後、遊文舎に期待する事は

 出版界の動向やトレンドを注視され、密度の濃い情報を提供くださることですね。「今こうしておけば、○○に対応できる」「こうすれば経費削減が図れる」といった先読みできる提案を期待しています。この数年で出版界を取り巻く環境は大きく変化しています。その中で本会と遊文舎様が相互に補完し合うことで、共に学生や社会に貢献できれば、と考えています。

(聞き手:S・わだ)

印刷Part. 10

生産管理○○な話 ─その5─

美しい日本語組版のルールを知り、守る
─新聞大組は待ったなし真剣勝負だったころ

●前回は遊文舎のいまの生産管理部門のお話でしたが、今回はもう少し古い、むかしのお話をさせていただきます。

 1 面「写植の時代展」で20〜30年前の手動写植について触れていますので、さらに遡って50年前、私の学生時代の活版印刷の体験を思い出すままに。
 まったく私的な経験ではありますが、いまではもうどこにも見当たらない50年前のことなので、少しは歴史的な意味もあるかとひとり合点しています。

●私は学生時代、大学新聞会に属し、取材・広告取り・記事起こしから、整理・割付・大組立合いまで、当時の活版による新聞作りの一通りのプロセスを体験しました。

 「活字」「文選」というのは、印刷の歴史のなかでは必ず説明され割り方知られていますが、いちばん大変なのは「活字組版=手組み」で、これはあまり語られていないようです。特に新聞の場合は書籍などとは違って大きいブランケットサイズなので、「大組(おおぐみ)立合い」といい、職人さんと編集者との一対一の待ったなし真剣勝負のような緊張関係のなかで組版作業がすすみます。
 当初の割付通りにスムーズに納まったときは、学生ながら「ヤッター、カンペキー」と大喜びですが、そんなことはメッタにありません。どこで間違ったのか、はみだし原稿や穴あきが出てしまい、職人さんの腕のみせどころとなってしまうのが大抵でした。

▲当時の組版の様子(ダヴィッド社『編集ハンドブック』より)

●新聞組版には、ルール=タブーが多くあり、それも職人さんの方が詳しいのです。例えば、

・紙面に白場(しろば)は残さない

・腹切り禁止(段間罫を左右いっぱいに通すと紙面を上下に分断してしまう)

・二本足禁止(下段へつづく記事が二本以上あると目が泳いでしまう)

 等々…。これらは日本語組版の基本のうえに作られたルールなので、煩わしいけれど守らねばならないもので、よく教えていただきました。
 狂った帳尻を合わせて大組を完成させるには、見出しの行取りを変えたり、記事をカットするなど組み直しますが、職人さんはスペース・インテル等で、字間・行間を一字ずつ調整してくれます。いまのようにRTワンタッチなど夢のような話です。
 飾り罫や囲み記事、紙型・鉛版など苦労話の種は尽きませんが、要は技術がすすんで美しい日本語組版の伝統がどうなったかということです。必要なルールを知り、守るという肝心のところを、当時の職人さんたちのようにきちんとおさえているかどうか、少々心もとない気がしています。

(記:遊民)

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